生まれた時だけでなく、末永く子育て世帯に寄り添いたい。自治体が贈るベイビーボックス。

島根県江津市

Aug 2, 2024

日本海に面し、豊かな水と自然、温暖な気候に恵まれた島根県江津市(ごうつし)。

島根県江津市では2023年4月より、市に出生届を出したお子様のご家族へ江津市オリジナルの子育て支援ギフトとして「ごうつベイビーボックス」をお贈りしています。

少子化対策のためにお子様の出生をお祝いしてギフトを贈呈している自治体は少なくありませんが、江津市はギフティを利用し、デジタルとモノのハイブリッド型のギフトを用意しました。

「おめでとう」の気持ちを伝えるギフトを通じ、子育て世帯が常に江津市とのつながりを感じられるように、という想いを込めたベイビーボックス。

施策がどのように進んだのか、子育て支援課子育て支援係の佐々木浩真さん、加藤智美さん、政策企画課デジタル推進係の津村健太さん、そして本案件を担当した株式会社ギフティ STUDIO GIFTEEの池田亜矢子さんに話を聞きました。

子育て世帯への「切れ目ない支援」を目的に、新しい形での支援をスタート

⸺ まず、今回の「ごうつベイビーボックス」の概要について教えてください。

津村さん:「江津市ベイビーボックスプレゼント事業」は、江津市に産まれたお子様の健やかな成長と、安心して子育てのできる環境作りを応援することを目的として実施される、江津市独自の子育て支援事業です。2023年4月以降に出生したお子さんを養育する江津市内在住のご家庭を対象に、子育て支援ギフト「ごうつベイビーボックス」を贈呈するというものです。

佐々木さん:「ごうつベイビーボックス」には、ベビー服やおもちゃ、マザーバッグなど、生後間もない時期から育児に活用できる実用的なモノのギフト10点と、カードタイプのデジタルギフト「ごうつベイビーeGift」の計11点を詰め合わせた江津市オリジナル仕様のギフトボックスです。

こちらのギフトは、出生届を出されたそのときに、その場で市役所の職員が「おめでとうございます」の一言とともに手渡しています。

⸺ 「ごうつベイビーボックス」をお贈りすることにした経緯はどのようなものだったのでしょうか。

津村さん:ある企業様から「企業版ふるさと納税」とも呼ばれる「地方創生応援税制」で寄付をいただいたことが企画の始まりです。この企業様では子育て中の社員が多く働いていることから「より子育て世帯への福祉を充実させたい」と感じられたようで、「子育て支援に使ってほしい」とご連絡をいただきました。そこから子育て支援課と連携し、企画がスタートしました。

ギフトを通じて子育て支援をするという企画の大筋は早い段階で子育て支援課が考案していましたが、新しいアイデアを求めて政策企画課デジタル推進係にもご相談をいただきました。検討の結果、浮かび上がったアイデアが“ベイビーボックス”の贈呈でした。

ベイビーボックスはフィンランドで行われている少子化対策施策のひとつで、お子様の出生直後に必要なモノが詰まったギフトボックスが行政から贈られるというものです。なかには、衣類やブランケット、マットやシーツなど、赤ちゃんのお世話をする際の必需品が詰められています。子育て世帯を応援していることが伝わるようなラインナップと、デザイン性の高いアイテムが厳選されていることでもたびたび話題を呼んでいます。

佐々木さん:これまでも子育て支援課では、妊娠から出産・育児期間中も切れ目のない支援を行ってきました。しかし核家族化が進み、子ども全体の人数が少なくなったことで気軽に相談することや他者に頼ることなどが難しくなり、子育てに悩む人は増えるばかりです。生後4カ月までにお子様が出生した全家庭に保健師が訪問し、悩みや不安を聞き、相談に乗るといった施策は実施していましたが、まだできることがあるのではと考えていました。

ですからベイビーボックスの案を聞いたときに、これまでとは違う形で子育て支援ができると感じ、実行に移すことにしたのです。

津村さん:せっかくならシティプロモーションにも役立つよう、新規性や話題性があり、江津市の知名度アップにもつながる施策にしたい。このように考えた結果、ベイビーボックスの江津版をデジタルギフトで行えないかと思いました。そこでさっそくデジタルギフトについて検索したところ、ギフティさんがヒットしました。

祝福の気持ちが伝わるよう、デジタルとモノのギフトを組み合わせた

⸺ 「ごうつベイビーボックス」はデジタルとモノのハイブリッドなギフトです。デジタルギフトで検索されていて、どうしてこのような形になったのでしょうか?

津村さん:ギフティさんに問い合わせをしたところ、すぐに返信があり具体的なギフトの相談に乗ってもらえることになりました。

当初、江津市側はデジタルギフトのみの贈呈を想定していたのですが、気持ちを伝えたい品はあえて手渡しをするといいこと、実物をお渡しすることでお祝いの気持ちが伝わりやすいことなどを教えていただき、このようなハイブリッド型のベイビーボックスができあがりました。

佐々木さん:先にもお伝えした通り、「ごうつベイビーボックス」は、出生届を出されたそのときに、その場で手渡しています。大きめのトートバッグのなかにギフトがたっぷり詰まっているので、そのどっしりとした重さに祝福の気持ちがあらわれる、というわけです。

⸺ 実物を手渡すことでセレモニーのような雰囲気を演出し、市がお子様の出生をお祝いしている気持ちが伝わりますね。

加藤さん:手触りを感じることで実感がわきますよね。実際に「おめでとうございます」と言って直接手渡すと、皆さんうれしそうな顔をされるので、市の職員にとっても幸せな楽しい業務のひとつになっているようです。

「宝物のような赤ちゃんに、宝箱のようなBoxを」。コンセプトに込めた想い

⸺ ギフトのコンセプトや、込めた想いはどのようなものだったのでしょうか?

池田さん:産まれてきてくれた赤ちゃんは、まさに地域にとって“宝物”のような存在です。江津市で明るく心豊かに育ってほしいという想いをたっぷり込めた、宝箱のような特別なギフトボックスを提案させていただきました。

ギフトのラインナップは、育児中のご家庭が、江津市という土地で、「お家」でも「お外」でも毎日楽しく過ごしていただけるように、また、子育て中の保護者の方にもご利用いただけるようなものを取り揃えています。

佐々木さん:ギフトのデザインテーマやロゴなども複数パターンいただいており、どれも素敵で毎回選定の際には迷いました。子育て支援課には子育て中の職員が多いので、課内から広く意見を募り、みんなで楽しみながら選んだことを覚えています。

デザインテーマはポップなもの、江津の豊かな自然を表すもの、赤ちゃんを包むような柔らかな「ゆらゆら」のモチーフの3つから選びました。江津市での子育てに安心感を覚えてほしいと、「ゆらゆら」デザインを選びましたが、どれも本当に素敵で悩みました。

江津で生まれ育つ喜びを分かちあえるようなアイテム

⸺ 「ごうつベイビーボックス」には10種ほどのアイテムが詰められていますが、とくにこだわって選定したアイテムはありますでしょうか?

 佐々木さん:江津市は子育てについて「切れ目のない支援」をすることを目標に掲げています。そのためベイビーボックスを渡して終わりにするのではなく、ギフトを通じて子育て世帯が常に江津市とのつながりを感じてもらい、何かあればすぐに頼ってほしいことを伝えたいと思いました。

それを体現するアイテムのひとつとして、積み木を入れています。お子様がブロックを積んで遊ぶことができるのはもちろんのこと、日付を表すことができるようにデザインされているので、記念日には組み合わせた積み木とともにご自宅などで写真撮影ができるようになっているんです。江津市と一緒に素敵な思い出を積み重ねてもらうことで、子育てを楽しんでほしいと考えました。

佐々木さん:ギフトボックスの内側には市長からのお祝いのメッセージも入れています。江津市は、皆さんとともに子育てに取り組んでいきたいと考えていること、困ったことがあればいつでも相談をしてほしいという思いを込めました。

津村さん:若手職員の発案で地元企業の製造するアイテムも取り入れました。素材にこだわったブランケットで、肌触りがよく、お子様を優しく包むことができるものです。地域への愛着形成に結びつくことを願って選びました。

 

⸺ 受け取った方からの評判がいいアイテムはどちらでしょうか?

佐々木さん:いずれも満足度は高いですが、とくに評判がいいのはマザーバッグです。ベイビーボックスのなかに入っているものではなく、ベイビーボックスを入れて手渡すときにも使っているものです。キャンパス地に白の糸で「Gotsu Baby」と刺繍を施してあり、シンプルながらもオリジナリティのあるデザインになっています。 

加藤さん:乳児健診のときなどに、お持ちいただく方もおられますし、アンケートでも高評価をいただいています。窓口で「保育園に持っていこう」と言ってくださる方もいらっしゃいます。

津村さん:江津市のオリジナルアイテムでありながら使い勝手がいいところがポイントですよね。ギフトは大きめのギフト缶のなかに詰めており、このギフト缶も一押しのアイテムです。どんどん増えていくお子様との思い出をこのケースに詰めて、一緒に成長を喜ぶことができればと。タイムカプセルのような役割を果たしてほしいと思っています。

池田さん:ありがとうございます。ギフトのラッピング部分まで、あますことなく日々の子育てに楽しく使っていただけるようなギフト体験をお届けしたいと思っていたので、喜んでいただけて嬉しいです。環境へも配慮し、“想い出を残す”という形で親子の絆を深め合える仕組みを作り、未来へとつなげていきたいと考えています。

デジタルギフトで地元経済にも貢献

⸺ デジタルギフト「ごうつベイビーeGift」について詳しくおうかがいできますでしょうか?

佐々木さん:「ごうつベイビーeGift」は、ギフトを受け取った方が好きなギフトを選べる、カードタイプのデジタルギフトボックスで、ギフトラインナップやカードのデザインを江津市仕様にカスタマイズしています。カードに印字された二次元コードをスマートフォンなどで読み込み、アンケートに回答することで、デジタルギフトがもらえます。

全てがモノではなく、ギフトカードを使って自分で欲しい物を選べるのが嬉しい、という声もいただいており、モノとデジタルギフトのハイブリットの良さを感じています。

 

⸺ 「ごうつベイビーボックス」全体ではどのような評価をされていますか? 

佐々木さん:全体の95%が満足だと感じているようです。アンケートに「他の市町村に住んでいる人に自慢できた」と書いてくださる方もいました。また、お子様が3・4人目ともなると周囲の方からお祝いをしてもらう機会が少なくなるようで「市からお祝いをしてもらえたことが嬉しかった」と記入してくださった方もいました。

20数年後の未来を見据えた、末永い事業に

⸺ 「ごうつベイビーボックス」事業を実施されてみていかがでしたでしょうか?

佐々木さん:事業実施以前から、江津市に生まれたお子様が健やかに育つためには末永い伴走支援が大切だと考えていたのですが、本事業を通じてそれを表現できたのではと思っています。お子様やご家族の方にまちに愛着を感じ、長く住み続けてもらうことで市の活性化につながれば嬉しいです。

津村さん:江津市には大学がないので、進学を機にまちを離れてしまう若年層が少なくありません。こうした事業をきっかけに、幼少期からエンゲージメントを築くことで一度はまちを離れても、また戻ってきてもらえるようにしていきたいと考えています。

概要

・クライアント名 : 島根県江津市 様

・業種 : 地方自治体

・企業サイト : https://www.city.gotsu.lg.jp/

・ギフトの目的 : 住民向け子育て支援施策。江津市内で生まれた子どもの誕生を祝い、子育て世帯を地域全体で応援する住民向け子育て支援施策を実施。出生届提出時に市役所で手渡しすることで、行政からの祝福や支援の気持ちが伝わるギフト体験として設計しました。

・制作物の内容 : 出産祝いギフトセット「ごうつベイビーボックス」(スチール缶入りベビーグッズ+デジタルギフト「ごうつベイビーeGift」)。スチール缶入りのベビーグッズと、カードタイプのデジタルギフト「ごうつベイビーeGift」をセットにし、江津市オリジナル仕様で制作。地域らしさやあたたかさが伝わるデザインと、子育て家庭にとって実用性の高いギフト内容を両立しました。

プロフィール

島根県江津市

・佐々木浩真さん、加藤智美さん(子育て支援課子育て支援係) : 児童福祉と母子保健を担当。家庭や児童の相談支援業務や要保護児童への対策に取り組んでいる。

・津村健太さん(政策企画課デジタル推進係) : 行政のDX化推進を担当。デジタルを活用した事業の提案や市役所内の各担当課の支援も行う。


株式会社ギフティ

・池田亜矢子さん(STUDIO GIFTEEチーム): クライアントが伝えたいコンセプトやストーリーを紐解き、企業のオリジナルギフトに落とし込む「Swag」をはじめとしたギフトの企画事業を担当。

・施策実施時期: 2023年〜

※掲載されている情報は2024年8月時点のものです

 

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